妻・夫から調停を申し立てられた側の方へ
目次
- ある日突然、郵便受けに「〇〇家庭裁判所」からの封書が入っていた。中を開けると、「調停申立書」,「期日通知書」などが入っている -
この場合にどう対応すべきかの、解説です。
1 書類の確認と保管
まず、家庭裁判所から郵送された各書類は、目を通して内容を確認し、保管しておいて下さい。
あなたとしては、いきなり調停に呼び出されただけでも気分が良くないのに、書面を見ても苦痛になり、あまり読みたくなかったり、ほうったままにしてしまうかもしれません。
しかし、あなたの言い分を正しく主張するためにも、
・「申立人側が何を主張しているのか」(たとえば申立人が離婚を求める理由が、あなたが思っていたものとは違うかもしれません)
や、
・裁判所の担当部署はどこか、が記してある書面は、きちんと保管しておいたほうが、あなたがスムーズに動けます。(万が一、本当に紛失してしまった場合には、裁判所でコピー(手数料が数百円かかります)することも可能です)
2 調停への出席・欠席の判断
基本的には、調停には可能な限り出席して下さい。
いきなり調停に呼び出された側としては、
・「離婚したくないのに離婚調停になんて行きたくない、、、」
・「普通に話し合えばいいのになんで調停なんかしてくるんだ、、、」
・「調停って何をするんだろう。不安だ」
・「平日は仕事が忙しくて行くことができない」
などと人によって思いは様々でしょう。
しかし、調停が申立てられてしまった以上、相手との直接の話し合いのステージは、もう移動したものだと、割り切ることも必要です。
また、調停は調停委員という第三者に、あなたの言い分や、申立人側の不当さを伝えることができる場でもあります。夫婦同士の話では感情的になって相手が聞き入れなかったことが、第三者の調停委員を通じての話だと、通じやすくなることもあります。
3 調停に出席できない場合の対処方法
初回の調停期日は、申立人と家庭裁判所のスケジュール調整で決まります。そのためどうしてもその日に外せない用事が入っていることもあるでしょう。
そういった場合でも、無断欠席はせずに、
・期日通知書・呼出状に記載がある家庭裁判所の担当部署に電話をして、出席できないことを説明をする
もしくは
・「事情説明書」等の書面に、出席できない事を記載して、家庭裁判所に郵送か、FAXする
などの対応をして、出席できない事やその理由を、あらかじめ裁判所に伝えるようにして下さい。
(裁判所に電話する際には、上記の期日通知書等が手元にあれば、事件番号(「令和〇〇年 家(イ)第・・・号」)を伝えればスムーズにしやすいです)
多くの方は今まで、「裁判所」に電話などしたことがないでしょうから、緊張するかもしれませんが,基本的には丁寧な対応をしてくれます。また初回の調停期日に相手方が出席できないことは、しばしばあるので、裁判所も対応には慣れています。
【※ 裁判所へ電話の仕方の例(あくまで参考例です)】 「〇〇と申します。△△調停の件で、事件番号は「令和××年(家イ)第・・・号」事件、申立人〇〇□□さんの件の、相手方の者です。調停期日に出席できないので、担当の方をお願いします。」 → 担当者に電話をつないでもらい、出席できないこととその理由、今後の進行について話す。 (電話の際には、次回の調停期日の日程調整の話になるかもしれないので、手帳等、スケジュールがわかるものをお手元に置いておかれたほうがいいです。) ※ もし「期日通知書」等を紛失してしまって担当部署や事件番号がわからない際は、家庭裁判所のホームページで代表電話番号を探し、そこに連絡して、調停になっていることや、申立人と自分の氏名(漢字でどう書くかも)を伝えれば、担当部署を探して教えてもらえます。また電話でなくとも、家裁からの封書に同封の「事情説明書」「進行メモ」などの書面に、出席できないことやその理由、「今後は毎週〇曜日であれば、調整しやすい」ことなどを記載して、裁判所に郵送や、FAXをしてもよいでしょう。 |
4 調停を無断欠席するとどうなるか
もし、裁判所に電話も書面送付もせずに、調停を無断欠席するとどうなるか、の話です。
(1)マイナスの印象
まず、そのままの、「相手方は連絡も一切せずに、調停を無断欠席した。」という事実が、明確に残ってしまいます。
離婚や子どもの親権者をめぐる紛争というのは、当事者双方の人格についての主張し合いになることも多いです(例「相手方はモラハラの傾向が強い」・「意見の相違があるとすぐ怒鳴る」など)。
そのため、あなたの人格についてマイナスの印象を与えるような行為は、避けたほうがいいでしょう。
確かにいきなり調停に呼び出された側にとっては、勝手に決められた期日ですが、申立人側のみではなく、家庭裁判所もスケジュールを調整した上で期日を設定しています。欠席の連絡がない限りは、「その調停日時にあなたが裁判所に来る」という前提で、関係者全員が準備をしており、当日は待ちぼうけをさせてしまうことになります。
それらの点を考慮して、電話一本でマイナスの印象を回避できるのであれば、しておいたほうがいいでしょう。
(2)あなたが主張できずに審判される危険(婚姻費用分担調停について)
これは1回だけの無断欠席で決まる可能性は低いですが、婚姻費用調停については、裁判所で話し合いによる成立が不可能と判断されると、「審判」という、裁判官が婚姻費用額を決める手続きに移行します。
そのため、欠席を続けてしまうと、収入・支出に関するあなたの主張や、申立人に対する反論がないままに、裁判官が婚姻費用を決めることになってしまいます。
(3)後に離婚裁判が提訴される可能性(離婚調停について)
これが、「不利益」となるかは人それぞれですが、離婚調停が成立不可能と判断されると、調停が終了し、離婚裁判の提訴が可能となります(離婚訴訟はまず離婚調停を経ないと、提起できません)。
裁判になれば、調停のような話し合いとは異なり、基本的には法律上の離婚事由の有無・慰謝料発生事由の有無等についての、主張・立証の対応となります。
そのため、離婚裁判が提起されるのを避けたい方であれば、調停に無断欠席などせず、出席してあなたの言い分を述べるべきでしょう。
5 弁護士を就けずに調停をする際の注意点
まず、調停には必ずしも弁護士を就ける必要はないですし、実際、ご本人で調停を続けている方もいます。
そこで、弁護士を就けずにご自身で調停されたいという方への、気を付けるべき点を、3つ、以下に述べます。
(1)調停委員に関する基本的な知識
(2)最終結論を考えているか
(3)自分の希望する結論につながる話・主張ができるか
(1)調停委員に関する基本的な知識
まず、裁判所のホームページから引用します。
「調停委員は,調停に一般市民の良識を反映させるため,社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれます。具体的には,原則として40歳以上70歳未満の人で,弁護士,医師,大学教授,公認会計士,不動産鑑定士,建築士などの専門家のほか,地域社会に密着して幅広く活動してきた人など,社会の各分野から選ばれています。(中略) 家事調停(=離婚・婚費・面会調停など)では,夫婦・親族間の問題であるため,男女1人ずつの調停委員を指定するなどの配慮をしています。」 |
なお、上記解説では「弁護士~」とありますが、必ずしも調停委員が法律の専門家であるとは限りません(もちろん多くの調停委員の方は法律の勉強もされています)。
そして、調停委員の方達は基本的に、「最後はお互いの合意をまとめて、調停を成立させよう・このトラブルを調停で解決しよう」という方針で、話を進行します。
なお、ほとんどの調停委員の方達は、決して多くはない報酬で、ボランティア精神で他者の紛争解決のために、尽力してくれる方々です。
ですので調停ではまず、調停委員が自分に共感してくれるよう、丁寧かつ、第三者が聞いてもわかりやすい話を、心掛けるべきです。
ただし、ごく一部調停員にも、不正確な知識を述べたり、片方の明らかに不当な要求を無批判に伝えるだけの方もいます。
そのような場合には、「調停委員は決して裁判官ではない」(※「調停官」は裁裁判官と同等です)、「私が同意しない限り、調停が成立することはない」と割り切って、調停委員の態度に右往左往せず、しっかりと自分の主張とその正当性を、伝えるようにしましょう。
(2)最終結論に向けて考えているか
いきなり調停を申立されてしまった直後に、最終結論を出すのはもちろん難しいと思います。また「離婚」「親権」は、ご自身やお子さんの人生の重要事項であり、迷いが生じたり、一度決めた考えがゆれることもあるでしょう。
しかし、結論を出すまではいかなくとも、自分なりに方向性を考え、調停ではそれに向かうための話をしなければ、わざわざ時間を割いて裁判所まで赴いても、あなたにとって意味が薄くなってしまいます。
特に夫婦に関するトラブルは、それまでの積み重ねや、互いの家族に対する強い思い入れなどから、どうしても感情的になってしまい、調停の場でも話がそれたり、「売り言葉に買い言葉」・「言った言わない」の流れになってしまいがちです。
むろんある程度は、そうなってしまうのは仕方がありません。しかし、それだけで終わってしまっては意味がないので、
・「私が、一番優先したいことはなにか?」
・「他の条件を譲ったとしても、『これだけは絶対譲れない』事があるか?」
・「互いに合意ができずに調停が不成立となり、その後に訴訟に発展してもよいか?」
などを考えつつ、望ましい方向に向かうためにはどんな話をしたり、夫婦の過去のいきさつでどんなエピソードが重要となってくるのかを、自分で組み立てて話していくべきです。
(3)自分の希望する結論につながる話・主張ができるか
上記の(2)とも重なりますが、離婚に関するトラブルは、どうしても夫婦・家族の歴史の積み重ねから、感情的になりがちです。「愛憎」という言葉が示すように、愛と憎しみは表裏一体なのかもしれません。
そのため、希望する結論に、そぐわない話を述べてしまうことがあります。
例えば
・「離婚は絶対したくない・もう一度やり直したい。」という希望であるにもかかわらず、調停ではひたすら、「相手や相手の実家はこんな非常識な人です!」の批判に終始してしまう
・「子どもの親権だけは絶対譲れない。」という希望であるにもかかわらず、現在子どもをみている別居中の相手に対し、「あいつに婚姻費用(子どもの分を含めた生活費)なんて1円も払いたくない!」と主張してしまう
このようなパターンがあります。
これらも、人間心理としては理解できる場合もあるでしょうが、「自分の望む結末に向けての話合い」としては、意味がなくなってしまいます。
また、調停委員からも、「この人『離婚したくない』とは言ってるけれど、これだけ相手や相手実家を憎んでいるのなら、もうやり直すのは無理だし、むしろ離婚したほうがお互いのためじゃないかな、、、」という感想を持たれてしまうと、どうしても離婚成立の方向に、話を向けようとします。
そのため、「相手はこんなひどい人間だ!」だけで終わるのではなく、感情の話はそれはそれで述べた上で、例えば離婚拒否であれば、
・「でも私はやり直したいし、やり直せると思います。その理由は~~です。」
という風に、あなたの望む結論につながる内容の話をして、かつ説得的に語れるようにしないといけません。
以上です。
妻・夫から調停を申立された方の、ご参考になれば幸いです。
また鈴木洋平法律事務所では、「何回か自分で調停に出ましたが、やはり弁護士に頼もうと思いました」という方からのご依頼も、多数受任しています。
ご自身で調停をされた方の中には、調停委員の何気ない一言に傷付き、涙を流される方や、調停委員が相手ばかりの肩を持つと不満と憤りをもたれる方もおられます。
こうした辛い経験をされた方々にも、調停を数多く経験した弁護士が仲間となりサポートすることで、より良い解決が得られることもあるかと思います。
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執筆者情報
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最も大事なこと、それは、お客様と信頼関係を構築すること。
弁護士にしか話せないこと、言えないこともあります。時間をかけても信頼関係を構築することが何より大切だと思っています。話しにくいこと、言いたくないことも出来るだけ話してもらえるよう、私はまずお客様の話す内容を時間をかけて細部までよく聴き、真意をつかみ取るように意識しています。お客様の話す内容については、単にご要望を伺うだけではなく、何故そのような心情に至ったのかを背景事情も踏まえて私なりに分析し、お客様の真意に見合った解決案を提示することを心がけています。
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