監護権(監護者の指定)

監護者とは、親権の一部である監護権を有する者と定義されています。親権のところで、親権には①身上監護と②財産管理の2つの側面があることを記述しましたが、そのうちの、①身上監護のみを担うものを監護権者といいます。

 

簡単に言えば、子供を引き取り、生活を共にし、身の回りの世話をする人のことです。離婚の際には、親権者と監護者を別個に定めることもできます。

 

例えば、夫婦双方が親権を譲らない場合などに、親権者と監護者に分けて、それぞれが部分的に子供の責任を負うというケースがあります。親権者を父親と定め、監護者を母親と定めた場合、子どもは戸籍上父親の戸籍に残りますが、一方で、実際に引き取って子どもの面倒をみるのは母親ということになります。

 

子どもがまだ幼い場合や、親権をめぐる父母の対立が激しい場合にこのような方法をとることが考えられます。

 

監護者のポイント

① 監護者は、子の養育保護の権利と義務がある

② 実務的には、親権者と監護者を分けることは少ない

③ 監護者になる場合は、取り決めを文書にして残す

④ 両親以外の第三者も監護者になれる

⑤ 誰が監護者であるかについて書面で残していない場合、問題となる可能性がある。

 

離婚届には親権者を記載する欄はありますが、監護者を記載する欄はありません。 離婚後のトラブルを避けるため、親権者とは別個に監護者を決める場合には書面に残しておいた方がよいでしょう。協議離婚の場合は離婚合意書か公正証書を必ず作成しておきましょう。

 

監護者は、両親以外の第三者がなることも可能です。 祖父母や両親の兄弟姉妹などの親族等が監護者となることもあります。

 

監護者の決め方

監護者は、親権者を選ぶ場合と異なり、離婚と同時に決めなければならないわけではありません。離婚が成立した後も監護者を決めることができます。

ここでも父母が協議で決めることができないときは、家庭裁判所に申し立てて決めてもらうことになります。家庭裁判所には、「子の監護者の指定」の調停または審判の申し立てをすることができます。

 

子の監護者の指定の制度を活用して無駄な争いを避けましょう。監護者は、父母の協議により決定できますし、戸籍の届出も必要ありません。 この制度をうまく利用して、親権者を決めるときのような争いをせず、子の幸福を考えて、相手を親権者としたまま自分を監護者として認めてもらうことによって子との生活を実現する方法も考えられます。

 

離婚後の親権者の変更についても相談がありますが、監護者の制度を利用することで円満解決を図ることができる場合があります。

執筆者情報

鈴木洋平法律事務所
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