ADHDの夫(妻)と離婚は可能?弁護士が解説

はじめに

配偶者にADHD(注意欠如・多動症)の疑いがあり、婚姻生活の継続が困難に感じられる方からのご相談が増えています。

 

ADHDの特性として、以下のようなものがあります。

 

  • ・約束を守れない
  • ・整理整頓が苦手(部屋が散らかりがち)
  • ・金銭管理ができない
  • ・細かいことが苦手、ミスが多く、注意が持続しない
  • ・衝動的な言動が多い

これらは、しばしば感情的な対立につながります。

 

ADHDという診断そのものが離婚事由になるわけではありませんが、ADHDの特性に起因して婚姻関係が事実上破綻している場合には、離婚が認められる可能性があります。

 

本稿では、弁護士の視点から注意点・離婚が認められるケース・実務的な準備方法について分かりやすく解説します。

1. 注意すべき点

ADHDそのものは離婚理由にならない

法律上、ADHDであることや発達障害の診断を受けていること自体は離婚原因にはなりません。

 

重要なのは、ADHDの特性によって夫婦関係が事実上破綻しているかどうかです。

感情的な対立のみでは不利になりやすい

長年の不満や怒りを訴えるだけでは、「性格の不一致」や「通常の夫婦喧嘩」と判断される可能性があります。

裁判上は客観的な事実の積み重ねが重要です。

支援や改善への対応の有無が重視される

裁判では、医療機関の受診、カウンセリング、家事・金銭管理の改善努力などを配偶者が拒否しているかが判断材料になります。

 

改善の機会が与えられたにもかかわらず協力しない場合、離婚が認められやすくなります。

2. 離婚が認められることがあるケース

婚姻関係が既に破綻している場合

  • ・長期間の別居
  • ・会話や協力関係の消失
  • ・夫婦としての実態がない

などの事情がある場合は、民法770条1項5号が想定する「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。

日常生活に著しい支障が生じている場合

  • ・借金・浪費の繰り返し
  • ・家計管理ができず生活が破綻している
  • ・無断欠勤や転職の常態化
  • ・家事・育児を一切行わない

等により家族生活が維持できない場合、離婚理由となり得ます。

精神的・経済的なDVに該当する場合

  • ・暴言や威圧的態度
  • ・生活費を渡さない
  • ・極端な感情爆発による恐怖支配

などがある場合、DVとして離婚が認められる可能性があります。

3. 有利に進めるために今すぐ始めるべき3つのステップ

ステップ①:問題行動を記録する

  • ・日時
  • ・具体的な行動内容
  • ・家庭への影響

を日記・メモ・スマートフォンで記録してください。

 

(例:「〇月〇日、生活費をギャンブルに使用し家賃が支払えなかった」など)

継続的な記録が重要な証拠になります。

ステップ②:証拠を残す

  • ・LINE・メールのやり取り
  • ・通帳・クレジット明細
  • ・録音データ(合法な範囲で)
  • ・医師の診断書(ある場合)

など、第三者が見て理解できる証拠を揃えてください。

ステップ③:別居の準備を進める

別居は婚姻破綻を示す有力な証拠となり、離婚成立を早める要因になり得ます。

 

感情的に家を出るのではなく、弁護士と相談のうえ計画的に進めることが重要です。

4. 慰謝料について

ADHD自体を理由に慰謝料を請求することはできません。

 

ただし、以下のような事情が認められる場合には慰謝料が認められる可能性があります(夫婦に原因が双方にあると判断される場合は認められないことがあります)。

 

  • ・改善努力を一切行わなかった
  • ・家族に深刻な精神的苦痛を与えた
  • ・浪費・借金・暴言などが継続していた
  • ・DVやモラハラに該当する行為がある

 

ただし、客観証拠が弱い場合に、感情的な部分で慰謝料に拘り過ぎると、紛争が長期化したうに、慰謝料は取れないか僅かになるということもあります。

 

解決のためには、偏りすぎないバランスが大切です。

 

要するに、判断の基準は「ADHDであるかどうか」ではなく、具体的な行為の内容によって決まるのです。

5. 弁護士に依頼するメリット

ADHDの配偶者との離婚は、問題の認識や話し合いが得られにくく、調停・裁判が長期化しやすいなど、通常より難易度が高い場合があります。

ADHDの配偶者との離婚事案の難易度が高い理由

  • ・相手が問題を認めない
  • ・話し合いが成立しない
  • ・拘りがあり、一つのことに固執し続ける
  • ・資料の散逸等で証拠の整理が進みにくい
  • ・感情的対立が激化しやすい
  • ・調停・裁判が長期化しやすい

しかし、弁護士に依頼することで次の点で有利になります

  • ・離婚成立の見通しの判断
  • ・証拠整理と主張構成の実務対応
  • ・相手方との交渉窓口の一本化(交渉が困難な相手との交渉も可能)
  • ・慰謝料・財産分与・養育費の適正確保

まとめ

ADHDそのものは離婚理由にならないが、婚姻生活が破綻していれば離婚は可能です。

 

証拠と準備が離婚結果に大きく影響します。

 

「もう限界かもしれない」と感じられたら、お早めに弁護士へご相談ください。

 

当事務所は発達障害や精神的問題が関係する離婚案件を多数扱っております。

 

まずはお気軽にご相談ください。

執筆者情報

鈴木洋平法律事務所
鈴木洋平法律事務所鈴木洋平
最も大事なこと、それは、お客様と信頼関係を構築すること。

弁護士にしか話せないこと、言えないこともあります。時間をかけても信頼関係を構築することが何より大切だと思っています。話しにくいこと、言いたくないことも出来るだけ話してもらえるよう、私はまずお客様の話す内容を時間をかけて細部までよく聴き、真意をつかみ取るように意識しています。お客様の話す内容については、単にご要望を伺うだけではなく、何故そのような心情に至ったのかを背景事情も踏まえて私なりに分析し、お客様の真意に見合った解決案を提示することを心がけています。
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