長期間の別居状態で夫婦間の交流もなかったため、夫の方が離婚の請求をした。 妻は夫からの婚姻費用の継続を求め、婚姻関係はいまだ破綻していないとして離婚に反対。また仮に破綻の場合は、夫の不貞が原因だ(有責配偶者)と主張。最終的には、和解離婚を獲得した例
目次
属性
夫 60代男性 (依頼者)
妻 60代女性
相談の経緯
依頼者は長い間、妻と別居状態が続いており、離婚を希望されていました。
しかし、妻とは連絡を取っておらず、どのように離婚手続きを進めればよいか分からないとのことで、当事務所へご相談いただきました。
なお、依頼者は事前に婚姻費用分担の調停に、ご自身で対応しており(妻には弁護士あり)、婚姻費用の額はすでに定まっていました。そのため依頼者は婚姻費用の支払いを継続している状態でした。
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当事務所の活動
当事務所にて離婚調停を申し立てましたが、妻は離婚に反対し、離婚の条件として過大な条件を提示しました。
そのため、当事務所は徒に調停が長引くことを防ぐため,調停を早期に不成立とし、離婚訴訟を提起しました。
妻は、離婚調停・訴訟いずれにおいても、依頼者の不貞行為や有責配偶者性を主張しました。
これに対して当方は、妻の提出する証拠に丁寧に反論しながら一貫して否定し、あわせて婚姻関係がすでに破綻していることを主張しました。
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結果
9回目の期日において、無事に和解による離婚が成立しました。
最終的には、財産分与として2分の1相当の金銭と若干の解決金を支払う内容で合意に至り、慰謝料の支払いはありませんでした。
※なお、本件の解決内容は、当該案件における事情に基づくものであり、同様の結果を当事務所が保証するものではありません。
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ポイント・所感
①不貞の主張に対し一貫して反論
当事務所では、妻の主張や証拠は不十分であると判断したため、ひとつずつ丁寧に否定・反論しました。その結果、妻の主張する有責性は「無し」と判断されました。
本件は和解となりましたが、仮に判決に至ったとしても、不貞行為は認定されなかったものと思われます。不貞に関しては、証拠の有無やその評価が極めて重要になります。
②離婚調停を早期に終了し、訴訟を提起
一般的には、有責配偶者とされる側が離婚を希望する場合、訴訟で離婚判決を得るのは難しいため、調停での話し合いによる解決を目指すことが多いです。
しかし本件では、依頼者との打ち合わせを重ね、離婚判決が得られる見込みがあると判断したため、早期に調停を見切り、訴訟へ移行しました。
③解決金について
本件では、財産分与金に若干の解決金を加えて支払うことで解決を図りました。
理由としては、婚姻期間が長引くことで婚姻費用の負担が増加することが懸念されたからです。さらに言えば、仮に離婚判決が出ても、控訴となった場合、離婚成立の時期が半年ほど延びる可能性もあります。離婚成立の時期が延びれば、その分婚姻費用もかさみます。
調停で離婚するか、訴訟提起し和解で離婚するか、判決で離婚するか…
どの手段が良いかは個々の事案に応じて千差万別です。事案を的確に把握し、現実的かつ最終的な費用負担を抑える解決案を選択することが重要です。
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相手から有責配偶者であると指摘され、不安を感じている方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。
執筆者情報

- 鈴木洋平
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最も大事なこと、それは、お客様と信頼関係を構築すること。
弁護士にしか話せないこと、言えないこともあります。時間をかけても信頼関係を構築することが何より大切だと思っています。話しにくいこと、言いたくないことも出来るだけ話してもらえるよう、私はまずお客様の話す内容を時間をかけて細部までよく聴き、真意をつかみ取るように意識しています。お客様の話す内容については、単にご要望を伺うだけではなく、何故そのような心情に至ったのかを背景事情も踏まえて私なりに分析し、お客様の真意に見合った解決案を提示することを心がけています。
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